残念御曹司の最初で最後の恋物語


「――どうしました?」


彼女が首を傾げると、ふんわりと甘い香りが鼻孔をくすぐる。

小さな顔の周りをふんわり包む栗色の髪。

真っ黒なビー玉みたいな麗しい瞳。

それを包む翼のような睫毛。

小さく華奢な身体。

日本人なのに、ビスクドールのような面立ちは、たぶん僕だけではなく、全ての人を引きつけるであろう。

しいて言えば、天使だ。


「あの⋯⋯」

「美しい⋯⋯」


「はい⋯⋯?」

「美しい⋯⋯!!」


ガバっとその腕にしがみつき、抱き締めた途端。
彼女のタレ目がちの瞳が、カッと大きく見開かれた。


「君をたった今好きになった! 僕と付き合ってくれ!」


――これは、バラ色のキャンパスライフのはじまりに違いない!!

そう、確信した。


「きゃーー!!」 


バチーン!

⋯⋯⋯⋯か、かくしんした。

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