愛しい君のわがままを
一瞬、自分から逸らされた眼差し。

足元に落ちた視線。

震えたように見えた長い睫に、あ、やばい、泣かせる。と胸がざわついた瞬間、ふわりと淋しげな笑みが返った。


「先輩、モテるから……仕方ないですよね」


初めて見るその表情。

何も言えないままの俺に、あっちで一緒に写真撮りたいです、と話題を変えるように付け加えて背を向け歩き出す。



華奢な後ろ姿。



愛らしくまとめられた髪を飾るのは、出掛けた先の露店で目に付いた、陶器の飾りがついたヘアゴム。

それをつけている彼女を校内で見かける度に、こいつは俺の、なんて密かな独占欲と優越感を感じていた。


大切にしてる気持ちが伝わってるなんていう、自己満足と共に。
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