愛しい君のわがままを
でも、それは本当にそうだろうか?
あんな表情させておいて、気の利いた一言も言えなくて、


彼女ばかりが大人になっている。


立ち止まったままの俺と、歩き出した彼女との間にできていく距離。
ゆっくりと離れていく彼女の背中に、急激に湧き上がる不安。


『いつか突然愛想尽かされますよ』


後輩の言葉が、急に現実味を帯びて冷たく背筋を伝う。


なんて呑気なことを考えていたんだろう。
俺なりに大切にしている、なんて。
分かってくれてる、なんて。
このまま当たり前に彼女がずっと隣にいると疑わずに。



彼女が永遠を、約束してくれたわけでもないのに――。
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