尾を噛む蛇
廻る
「お久しぶりです。田中さん。」
女の人が私に向かってゆっくりお辞儀をした。
「佐藤さん。お久しぶりです。ありがとうございます、遠い所からわざわざ。」
「いえ、おじいさまには生前、うちの子もお世話になりましたから。」
そう言って佐藤さんはまた頭を下げた。先月、私の祖父が亡くなった。人当たりがよく、子供にも好かれるような人で、お葬式にも沢山の人が集まっている。自分の事はあまり語らない人だったが、時々話してくれたある話が私は好きだった。けど、それはいつも途中で終わってしまう。続きを聞いても、いつもはぐらかされてしまうのだ。いつだかには、自分が亡くなるまで見てはいけないと小さな紙を渡して「続きはサキが作るんだよ。」祖父はそう言っていた。
けれど、これを読むのはもう少し後にしよう。
「あら、やだ私ったら。」
佐藤さんは、突然何かに気付いたように声をあげた。
「もう、とっくに田中さんじゃなくなってたわね。水谷さんでしたっけ、水谷サキさん。」
佐藤さんは「ごめんなさいね。」と私のお腹を見て言った。
そうだ、続きが読めたら聞かせてあげよう。これから生まれてくるこの子にも。
永遠で眠る、尾を噛む蛇の話を。
女の人が私に向かってゆっくりお辞儀をした。
「佐藤さん。お久しぶりです。ありがとうございます、遠い所からわざわざ。」
「いえ、おじいさまには生前、うちの子もお世話になりましたから。」
そう言って佐藤さんはまた頭を下げた。先月、私の祖父が亡くなった。人当たりがよく、子供にも好かれるような人で、お葬式にも沢山の人が集まっている。自分の事はあまり語らない人だったが、時々話してくれたある話が私は好きだった。けど、それはいつも途中で終わってしまう。続きを聞いても、いつもはぐらかされてしまうのだ。いつだかには、自分が亡くなるまで見てはいけないと小さな紙を渡して「続きはサキが作るんだよ。」祖父はそう言っていた。
けれど、これを読むのはもう少し後にしよう。
「あら、やだ私ったら。」
佐藤さんは、突然何かに気付いたように声をあげた。
「もう、とっくに田中さんじゃなくなってたわね。水谷さんでしたっけ、水谷サキさん。」
佐藤さんは「ごめんなさいね。」と私のお腹を見て言った。
そうだ、続きが読めたら聞かせてあげよう。これから生まれてくるこの子にも。
永遠で眠る、尾を噛む蛇の話を。