カサンドラの涙
潤が廊下を歩いていると、背後から急に肩を掴まれた。突然のことに潤は驚き、悲鳴を上げてしまう。

「そんなビビんなよ〜」

そう苦笑したのは、潤の友達である小塚世人(おづかよひと)だった。運動部である彼の肌は黒く焼けており、人懐っこい笑顔をしている。楽観的で前向きという潤とは正反対の性格だが、こうして仲良くしてくれるのだ。

「いよいよ三年生か〜。だるいよな」

世人の言葉に潤は「受験とか大変だもんね」と相槌を打つ。お互いに行きたい大学の話をしていると、あっという間に三年生の教室に着いた。ここで最後の一年を過ごすのだ。

自分が座る席を確認し、潤は自分の席に荷物を置く。潤の席は一番後ろのため、クラスメートの様子がよく見れた。目についた瞬間から、潤の頭の中にクラスメートの感情が入り込んでくる。

三年生だから頑張らなきゃと机に向かって勉強している生徒、友達と同じクラスで喜び合っている明るい生徒、好きなことをしながら緊張をほぐそうと本を読んでいる生徒、全員から違う感情が流れ込む。
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