研究員たちの思春期〜恋の仕方が分かりません!〜
研究棟の出口まで来ると、外は雨が降っていた。
最近はこんな天気が多い。

アパートまで歩いて帰ろう。

そう思って傘を広げた時、理仁が隣に立つ。

「あ、傘忘れた」

そう言って私を見る。

「予報で夕方から雨って言ってたよ」
「見てないよ、入れて」

私の右手から傘を奪う。
相合い傘っていうやつ。

これって、私、脈ありでは?

いや、でもこの人、ミジンコにしか興味ないから下心なしでできるのかも。
これが、例え李さんだったとしても、傘に入れてもらってたのかも。

だって、本人の口から「ミジンコにしか興味ない」って聞いてる。

狭い傘の中。
たまに触れる右腕。

ああ、緊張する。緊張するなって言うほうが無理。

だけど理仁はいつも通り飄々としてて、涼しげで、鼻歌を歌ってるくらい。
なんの歌かは分からないけど。

「ミジンコの受精卵がさ」なんて話をしてる。

ごめん、今は受精卵の話なんて頭に入ってこない。

だけど、一応適当に会話を繋ぐ。
このドキドキが今にも伝わりそうな気がして、きっと今の私の顔は真っ赤だ。

雨に感謝した。
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