研究員たちの思春期〜恋の仕方が分かりません!〜
なんて答える?

「はい」

静かに響いた一言。
胸にヒビが入る。

はいって言った?今。

理仁はポケットをガサゴソし始める。

本当に連絡先教えちゃうんだ。

そう眺めていたら、理仁が取り出したのは学会用の名刺だった。

名刺?

勝田エリーも受け取って「?」な表情になる。

それに書いてあるのって研究室用のメールアドレスくらいだ。
全然プライベートなんかじゃない。

「俺、基本的にずっとここいるんで」

理仁は淡々と言った。

研究室に呼んじゃうんだ。

連絡先ではなかったけど、なんだか連絡先よりも複雑だ。

研究室は理仁の聖域なはずだし、私にとっては貴重な大切な時間だ。
ミジンコにしか興味ないって言ってたじゃん。
美人に言われたらすぐ転がるんだ。

勝田エリーは少し驚きながらも、嬉しそうに笑顔になって「ありがとうございます」と言った。

そしてペコッと頭を下げると、講義棟の表の方へと駆け足で消えていった。

「研究室に呼ぶんだ?」

豚汁を飲みながら言う。

「俺、SNSとかやってないし」

焼きそばをすすりながら答える。

「たぶんあの人、俺がただのミジンコ馬鹿って知らないと思うから」

私は「そっか」と答えた。
豚汁の湯気がすぐに消える。
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