研究員たちの思春期〜恋の仕方が分かりません!〜
金曜日。
とうとう明日になってしまった。
16時。

休憩に研究室を抜けた理仁の背中を追う。

中庭の自販機前。

「ねえ」と声を掛けると、少し驚いて顔を上げた。

手にはコーラ。

「ああ、環もなんか飲む?」

なんでもないような顔して聞いてきた。

私は「これ」と言ってあったか〜いゆずレモンを指さす。

理仁がボタンを押すと、ゴトンという音を立てて下に落ちてきた。

「ありがと」

理仁の手から受け取る。

「なに?」

理仁が私を見てくる。

「明日、行くの?」

オレンジのキャップを開ける。
ペットボトル容器があったかい。

理仁が「うん」とだけ答える。

嫌だな。
行かないでほしい。

理仁がコーラを豪快に飲む。

「大丈夫?」
「何が?」
「あんな美人と二人でデート」

そこまで言って、私もホットゆずレモンを飲む。

甘い酸っぱさ。
体にじんわり沁みる。

「たぶん、『この人、話つまんないな』って思われて終わると思う」

理仁が少し笑いながら自虐的に言う。

「そうだろうね」

そう言うのは、私の期待。

「楽しいといいね」

心にもない言葉が出る。

「ダメならダメで、別にいいけど」

素っ気ない理仁の声。

「クラゲにはちょっと興味ある。何クラゲがいるのかなって」

そう話を変えた。

私たちはすぐ研究室に戻った。

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