研究員たちの思春期〜恋の仕方が分かりません!〜
昼休憩に、他の院生たちが学食へと消えた。

理仁が私の方を見る。

「生協行かないの」

ハッとして「行く」と答える。

一緒に財布を持って廊下に出た。

チラホラと学生が出てくる。
学部生は別の棟にいるから滅多に会うことはない。
この研究棟は院生ばっかりで、時間も決まってるわけじゃなくてどこかダラッとした雰囲気がある。

実験によっては昼休みを取るタイミングが掴めないまま夜になる。

理仁と私はちんたら研究棟の出口に向かって歩く。

「幻想ナイトリアムの話聞かせてよ」

階段でそう聞いてみた。
理仁は一瞬だけ考えたように黙って、すぐ口を開いた。

「何もなかったよ」

そう言って後ろをついて階段を降りていた私を見上げる。

「何もないわけないでしょう」

そう言いながら、少しだけホッとしていた。

「あれ見た後、ちょっとご飯食べて別れた」
「立派なデートじゃん」

私の言葉に理仁は「んー」と考え込む。

「緊張してるうちに終わった」

理仁の言葉と同時に一階に着いた。
渡り廊下に向かう。

「まあ、相手美人だもんね」
「頭いい子だからさ、何話しても盛り上がってくれたから、いい気になってずっと話してたんだよね」

理仁がずっと話してた?

珍しい。
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