研究員たちの思春期〜恋の仕方が分かりません!〜
「そしたら最後の最後に『本当にミジンコの話しかしないんですね』って」

理仁が私を見る。

「終わったよね、俺」

そうじゃないよ、と言ってあげたいけど、初デートでミジンコの話しかしないなんて不器用にも程がある。

緊張していたとはいえ、せっかく相手はミスコンにも出たり、ドイツ語話せたり、乗馬が好きな子なんだから、そこらへん聞けばいいのに。

とは思ったけど、理仁らしくて良かった。

「俺だって他にもいろいろ考えてたりするんだけど」

渡り廊下に出たタイミングで理仁がぼやく。

「いろいろって・・・」
「意外に思うかもしれないけど」
「うん、教えて」
「最近、実は」

溜めて溜めて私を見る。

なんだろう、理仁の最近考えていること。
ミジンコ以外に想像つかない。

「うん、なに?」

理仁の顔って本当に整ってる。
準ミスも惚れるはずだ。

「深海魚にドハマりしてしまいました」
「・・・」

拍子抜けした。

でもたしかに、それは超ビッグニュースだ。
だって、私も彼の口から深海魚なんて聞いたことがない。

我々が研究するミジンコは基本的に田んぼや池などの浅瀬を好む。

なのに深海なんて、一体彼の身に何があったんだろう。

「理仁が深海魚にハマるなんて」
「自分でもビックリだよ」
「何があったの」

そう聞きながら、もしや勝田エリーが深海魚好き?と不安になる。

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