研究員たちの思春期〜恋の仕方が分かりません!〜
だけど私の心配をよそに、理仁の口から出てきたのは「グソクムシ」というワードだった。

「グソクムシの顔面見たらかっこよくて」

グソクムシというのは、ダンゴムシの仲間だ。

「グソクムシ、甲殻類だもんね」
「そっか、自分でも気づかなかったけど、俺もしかしたら甲殻類好きなのかな」

新しい発見に、少し明るい顔をする。

「ダイオウグソクムシの動画見てたら、止まらなくなっちゃって」

なんか確かにミジンコの性決定因子のことを話してる時と同じ良い表情をしている。
この顔をするのは、よほどダイオウグソクムシに惹かれてるってことだ。

3年一緒にいるから分かる。

「でも深海魚に惹かれるのは分かる」

私は適当に言ってみた。
「惹かれる」だけで、詳しくはないんだけど。

「深海魚、好き?」

そう聞いてきた理仁の目が、いつになくキラキラしてる。

たしかに光の届かない海。
植物性プランクトンなら生きる術がない。
いつも長靴履いて田んぼや沼に生命体捕まえに行くことはあれど、深海なんて未知だ。

「興味はあるかも」

自然と口をついて出た。

「行かない?深海水族館」

なんと、ここにきてデートが決まってしまった。

ありがとう、ダイオウグソクムシ!!
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