研究員たちの思春期〜恋の仕方が分かりません!〜
「食べてみなって、騙されたと思って」

そう言ってまた一つスプーンを近づけてきた。

間接キッスをしてもいいってこと?
それとも、ただグソクムシを味わせたいだけ?

私の乙女心がシチュエーションを複雑にする。

もうグソクムシも間接キスも何も考えないことにした。
思い切って口を開けると、理仁がスプーンを入れてきた。

ふわっとカニのような香ばしさが広がる。

予想外の美味しさ。
エビ以上カニ未満。

「美味くない?」
「うまー」

理仁が満足げに笑う。

ああ、間接キッスをしてしまった。

少しだけそう考えたけど、理仁にはそんな下心なんてないだろうし、気にしないようにした。

気にしないようにしたけど、頭の中にこびりつくような、そんな感じ。

勝田エリーのこと、好きになってないといいな。
まだ私の方がリードしていたい。
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