研究員たちの思春期〜恋の仕方が分かりません!〜
水族館の出口。
まだ13時半。

「はやいね」

理仁が時計を見て言う。

「どっか行きたいとこある?」

そう聞かれて、全く下調べしてなかったことに気付く。
でももう帰るのは惜しい。

「んー」と考えていると理仁と目が合う。

「俺はまだ帰りたくないんだけど」

深い意味はないのかもしれない。
この土地が好きなだけかもしれない。

でも神様、お願いします。
私とまだまだ一緒にいたいって意味であってください。

「うん、私も」

なるべく冷静にそう答えた。

海に面した国道沿いに出る。

「もうなんだか冬の海って感じだね」

肌寒い季節。
秋っていうより、そろそろ冬だ。

「あー来年の学会、大丈夫かなー」

理仁がアスファルトを蹴りながら呟く。

チームでの発表だ。
うちではドクターの5人とマスターの3人で出る。

「私も不安。英語だし」
「何回やっても発表慣れない」

理仁のネガティブな発言は珍しい。
理仁でもそういう風に感じてるんだ。

完璧人間だと思ってた。

「でも」と理仁が言う。

「がんばろ」

私はそんな理仁を見た。

「うん、足引っ張らないようにするね」

私の言葉にコクンと頷く。

「ボロクソに言われても、何回でもやり直し聞くし」

そう言ってみせた。
理仁が笑顔になる。

海の近くだから風が強い。

少しだけ海が荒い気がする。

「風強いね」

そう言って見る横顔。

「寒い?どっか入る?」

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