研究員たちの思春期〜恋の仕方が分かりません!〜
ハッとして振り向く。

透明のついたての向こうから、懐かしい顔がひょこっと飛び出した。

「久しぶり」
「高尾さん」

研究室の2個上のOBの高尾さんがすぐ後ろのテーブルで飲んでた。

根本さんの代。
確か、院を出た後、化粧品メーカーに就職したはずだ。

全部丸聞こえ。

「今、友達と飲んでてさ」と言いながら、優那にもそつなく「どうも」と軽く会釈する。

「まだ理仁くんのこと好きだったんだね」

そう言って笑う。

開いた口が塞がらない。

「環、キープされてますよね?」

優那が話を続ける。

「されてるね、理仁くんもなかなかやるね」

高尾さんの落ち着いた笑み。

「っていうか、今2年?」
「いや、ドクターの1年です」

私の報告に、「えっ」と驚く。

実はそんなに言いたくない。
就職せずにずっと学生してること。

「ドクター?」

高尾さんは軽く引いてる。

「理仁はもうこのままミジンコの研究するんだろうなって思ってたけど、環ちゃんもそんなに好きだったの?」

そう言って私の目を見る。

そしてハッと表情を変えた。

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