研究員たちの思春期〜恋の仕方が分かりません!〜
「ねえ」

手のひらに出来た小さな水辺を眺めながら声を掛ける。

「また勝田エリーと会うの?」

私のその一言に、理仁から笑顔が一瞬で消える。

「またその話?」と言ってきた。

頷く私。

少しの沈黙。
私たち二人の間を穏やかな風が吹く。

「会うよ」

静かに響いた声。
その一言に落ち込む。

「やっぱり男ってみんな美人が好きなんだね」

手のひらの藻を溢した。
パンパンと汚れを払う。

「何言ってんの」

理仁が冷たい視線を向ける。

「なんだかんだ『知らない』『知らない』口実にして会い続けてるのは好きだからなんじゃないの」

私の声が木で囲まれた空間に響く。

「知らないから知ろうとしてるだけだよ」
「あの顔に惹かれて会い続けてるんじゃん」
「そりゃあ揺れるよ、あんなに美人で、性格も良くて、俺のこと好きって言ってきたら、普通に揺れるよ」

理仁がまっすぐに私を見る。

まっすぐだ。
理仁の言葉にはいつだって嘘がない。
優しい嘘がない。

苦しい。

「美人」とか「揺れる」とか、理仁に言わせるな。

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