研究員たちの思春期〜恋の仕方が分かりません!〜
理仁の手に人工的に遺伝子操作された卵のボトルがぶら下がる、大学から家までの帰り道。

こうやって隣を歩くのは、あのフィールドワーク以来だ。

なんとなく歩くスピードが遅い。

「一番厄介な部分、環に全部投げて、ごめん」

隣でポツリとつぶやかれた声。

白い息が暗い空に上がっていく。

「環だけなんだよ」

「何が?」と隣の理仁を見上げる。

「俺のこと、天才児扱いしないでちゃんと疑ってくれる人」

まっすぐ前を見てる鼻筋の通った横顔。

意味が分からない。

誰も通らない、すっかり年末モードの夜道。

みんな明日には地元に帰るんだろう。

「チームって言っても、俺が発見したから、俺のやりたいことだから、って最終的に全部俺」

虚しさを含んだ笑い。
理仁の孤独を感じた。

「『なんでこうなるの?』『こうした方がいいんじゃない?』って必ず突っかかってきてくれるの、今までの人生で環だけなの」

悲しく笑って、私を見る。

寒いのに、不思議と寒さを感じない。

「俺は、環に全信頼を置いてるよ」

理仁の言葉は嘘がない。
きっと、きっと本当の言葉だ。

人生で初めて言われた、そんなこと。

愛の告白よりもずっと嬉しいのは、なんでなんだろう。

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