研究員たちの思春期〜恋の仕方が分かりません!〜
・・・

思考が停止するって、こういうことを言うんだ。

口がグッと閉じ切って開かない。

唾を飲みこむ。

隣の理仁の顔を見ることができずに、目が部屋中を泳ぐ。

「私、全部、全部全部、初めてなんだけど」

何を言ってるんだろう。
そんな言葉が自分の口から出てきた。

「俺も初めてだよ」と理仁が軽く笑う。

理仁が身体ごと私の方を向く。

そっと後頭部に手を添えられる。

理仁の顔がゆっくり近づいてくる。

ゆっくり、ゆっくり。

こういう時って、どうすれば。

私はギュッと目を閉じた。

そして次の瞬間、唇がそっと静かに重なる。

ファーストキスはほのかにムースタルトの味。
たぶん理仁も一緒。

直前に食べたものの味がするって本当なんだな。

冷静にそんなことを思う。

唇がゆっくり離れると、優しく抱き寄せてきた。

男の人の身体。
かたい。
かたくて、大きい。

ガルシアさんと挨拶でハグしたことはあったけど、そんなの微塵も覚えてない。

耳の裏同士が触れ合う。

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