研究員たちの思春期〜恋の仕方が分かりません!〜
「ねえ」

見るところがなくて、壁に視線をぶつけながら声かける。

「ん?」

すぐ耳元で声がする。

「今、ミジンコのことどのくらい考えてんの?」

私の素朴な問いに、理仁の笑った息が頬をかすめる。

「今その名前出すなよ」
「考えてないの?」

グッと私を抱く腕に力が入る。

「考えてないよ」

理仁でも、ミジンコのことを考えない瞬間があるんだ。

壁の細かい模様をなんとなく眺める。
これは、小花模様?

「じゃあ、今何考えてんの?」

綺麗に敷かれた布団や枕を見つめる。

やたらと大きい枕だなーなんて思いながら。

「環のことしか考えてない」

私だけに届く理仁の声。

人生ってこんなことが起こるんだ。
私の地味な人生でも。

幸せで目を閉じる。

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