研究員たちの思春期〜恋の仕方が分かりません!〜
理仁と二人、夜の京都に飛び出す。

迷い込んでしまいそうな、ちらちらと暖かい光が散らばる世界。
理仁が引いてくれる右手。

物語に出てきそうなどっしりと輝く南座を過ぎて、四条大橋に出る。

川沿いに座る恋人たち。

理仁に導かれるように、河原へと下っていく。

鴨川。

静かに流れ行く水面は、情緒あふれる夜の街並みを反射する。

穏やかで、暖かい光。

理仁は案の定、川のすぐそばまで行ってしゃがみ込んで観察してる。

「ねえ、落ちるよ」

そんな私の声が聞こえないのか、夢中だ。

理仁が私のことだけを考えてるのは、きっとほんの一瞬。

さっきのホテルの部屋での出来事は、きっと奇跡的。

「いるいる!」

無邪気な声が私のところまで聞こえてきた。

もしや、二人で話し合いたかったんじゃなくて、本当に生物観察に付き合ってほしかっただけ?

理仁が振り向く。

「いるって!」

つい、その楽しそうな顔につられて、恐る恐る水面まで近づく。

確かに、魚たちが思いの外たくさん泳いでいた。

理仁がずっと満足そうに笑ってる。

私も落ちないようにバランスを取りながら、その隣に静かに座った。

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