研究員たちの思春期〜恋の仕方が分かりません!〜
それぞれもう3,4杯飲んだ頃、酔いの回った優那と理仁が私を挟んで言い合っていた。

「環のこと好きだったら、準ミスは振ればいいでしょ?」
「たしかに勝田さんには申し訳なかったけど、俺、環の気持ちなんてさっぱり知らなかったし」
「絶対うそ!」

もう終わったことだから、私にとってはどうでも良い話題だ。

「そうだ、俺聞きたかったんだけどさ」と高尾さんが切り出した。

「理仁くんはポスドク目指してるの?」

ポスドクというのは、ポストドクター。
博士課程を卒業した後の任期付き研究者。
非正規雇用。

突然の話題転換に、少し理仁が私を気にしながら言いずらそうに答える。

「はい」

重い返事。

なぜか、また私を見た。

高尾さんがゆっくり頷いて、優那に視線を配った。

なんだろう。

「ポスドクの彼氏、どう思う?」

なんてストレートな聞き方。

優那がグラスのマドラーをクルクルしながら言う。

「私は無理かな~」

その一言に場が固まる。

「な、なんで」

思わず私が理仁の代わりに言ってしまった。

「だって、いつになったら定職に就くか分からないもん」

優那が悪びれることなく答える。

理仁と私が避けに避けてきた話題。

確かに、もう25。
今年26。
博士課程を終えるのは27。
それからのポスドク。

「あの」と理仁が手を上げた。

私を含めた3人が理仁を見る。

「まだ環にも言えてないんだけど」

理仁が私を見た。

場が緊張感を持つ。

「アメリカに行かないかって、教授が」

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