研究員たちの思春期〜恋の仕方が分かりません!〜
突然の理仁の衝撃的発言。

初耳。

「それは院卒業したら?」

高尾さんが聞く。

「いや、この間の学会に来てた人からラボのメンバーにならないかって誘いがあって、できればすぐ」

そう言う目と目が合う。

寝耳に水状態の私の顔を見て、苦笑いになった。

「ごめん」

そう言って視線を落とす。

私は突然のことに言葉が出てこない。
否応なく空気が悪くなる。

「いや、俺はすごくいいと思うよ」

高尾さんが理仁をフォローした。

私も頭では理解してる。

理仁の能力で、あの二流大学の小さな研究室にいるのは勿体ないことくらい。

分かってるし、応援もしたい。

だけどせっかくやっと恋が実ったばかりで、気持ちが追いつかない。

「教授の推薦で大学の給付型奨学金も貰えそうなんだよね」

理仁がおどおどと私を見てきたのが分かった。

「期間はどのくらいなの?」

高尾さんが私の代わりに聞く。

「とりあえず12ヶ月行って、戻ってきて博士号とったら本格的に向こうのラボに在籍したい」

私の顔を伺ってばかりだ。

やめてほしい、そういうこと。

「授業料も免除だし、給与も出るんだよ?良くない?」
「それは分かるんだけど、気持ちが追いつかない」

私はやっと理仁の目を見た。

「俺は応援するけどね。日本にいるのは勿体無いよ」

高尾さんの声に、優那も「そうそう」と加担する。

「留学した方がいいよ、絶対」

そう言って、全員が私の反応を待つ。

< 95 / 108 >

この作品をシェア

pagetop