研究員たちの思春期〜恋の仕方が分かりません!〜
ああ、潔く笑顔で「いいじゃん!」って言える女だったらいいのに。

何も言いださない私を見て、理仁が「っていうか」と割り込んできた。

「環が何て言おうと、もう俺行くことは決めてるよ」

そう、そうだ。
そうなんだ。

これが理仁。

理仁のミジンコは愛を超える。

「遺伝子工学をちゃんとやりたい」

理仁の言葉はいつもまっすぐで、嘘がない。
自分に正直だ。

「気付いちゃったの、楽しさに」

今度は私が、ミジンコに負ける番。
理仁の研究愛の深さは、誰よりも私が知っている。

「うん、私が好きな理仁は、そういう理仁だよ」

私の言葉に、高尾さんと優那が顔を見合わせた。

「あれ?解決?」

笑顔で私の表情を確認してきた。

だけど、当の私は、笑顔を作ろうにも出てこない。

解決、してない。
なんだろう、このもやもや。

頭では、海外の大学院の方が理仁にとって絶対にいいのは分かってる。

なんで素直に背中を押せないんだろう。

研究してる理仁が好きなのに、何故。

「まあ、あとゆっくり二人で話し合います」

理仁がざっくり締めた。

付き合ってまだ1ヶ月。
なんで、なんで、なんでこうなるの。
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