身を引くはずが、一途な御曹司はママと息子を溺愛して離さない

「ごめんなさい。初めての人がちょっと苦手で」
「それじゃあこれからゆっくりと仲良くなっていくか」

 柊一さんは立ち上がると、手に持っていた白い箱を持ち上げる。

「これお土産。ゼリー買って来たんだけど、冬真は食べられる?」
「うん。大丈夫。冬真、ゼリー大好きだよね」

 ゼリーという言葉に反応したのか、私の後ろに隠れていたはずの冬真がひょっこりと顔を出した。

 その様子に笑顔を見せた柊一さんが腰を屈めると「はい、どうぞ」と冬真にゼリーの入っている白い箱を手渡す。冬真は少し戸惑った様子を見せたあと、恐る恐る手を伸ばして白い箱を受け取った。

 それを大切そうに両手に抱えながら「ありがとう」と小さな声で答えるので、柊一さんが「どういたしまして」と答えている。そんなふたりのやり取りに私の表情が自然と緩まった。

 柊一さんをリビングに招き入れると、三人でテーブルを囲んだ。

 夕食のメニューはから揚げとポテトサラダ、それからお味噌汁だ。帰宅してから慌てて作ったけれど、朝に少しだけ下準備をしていたのでなんとか間に合った。

 すると、テーブルに並ぶ料理をじっと見ながら柊一さんがぽつりと告げる。

「美桜、料理うまくなったな。から揚げが焦げてない」
「うっ……」

< 102 / 180 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop