身を引くはずが、一途な御曹司はママと息子を溺愛して離さない

 そういえば、お付き合いをしていた頃に私が作っていたから揚げはいつも揚げ過ぎて焦げていた気がする。というより、私は料理全般が苦手だった。

 でも、あれから四年が経ち、冬真のために毎日料理を作り続けていたら自然と上達した。

 それから三人で手を合わせてから食事を始める。冬真はさっそく大好物のから揚げをフォークでさすと大きな口で頬張った。

「おいしいね」

 そう言って、私に笑顔を向けたあと、ちらりと隣の柊一さんに視線を向ける。どうやらさっきからずっと気になっているようだけど、どう接していいのか困っているらしい。そんな冬真に柊一さんが優しく声を掛ける。

「冬真君はから揚げが好きなの?」
「うん」

 もぐもぐとから揚げを食べながら冬真がうなずく。それから、ごっくんと飲み込んでふたつ目のから揚げをフォークにさした。

「ママのから揚げが好き」

 そう言って、ぱくりとから揚げにかぶりつく。

「あとハンバーグも好き。つぶつぶお肉ご飯も好き」
「つぶつぶお肉?」

 冬真の言葉に柊一さんが首を傾げながら私を見たので説明してあげる。

「鶏そぼろのことです」
「なるほど、たしかにつぶつぶしているな」
「冬真、なぜかそう呼ぶんです」

 そう答えれば、柊一さんがくすりと笑った。それから冬真に向かって声を掛ける。

「冬真君はママの作るご飯が好き?」
「うん。いつも美味しいよ」

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