身を引くはずが、一途な御曹司はママと息子を溺愛して離さない
すると、足を止めたまま私に背を向けている柊一さんからぽつりと声が聞こえる。
「お前、それ反則だからな」
そう言って振り返ると、足早に私へと近づき、ちょっと乱暴に腕をつかまれた。
そのまま勢いよく引き寄せられたかと思うと、素早く唇を塞がれる。
唇を押し付けるような少し強引なキスに思わず私はぎゅっと目を閉じた。けれど、次第に彼のキスを受け入れている自分がいる。
名残惜しそうに柊一さんの唇が離れていった。ゆっくりと目を開けると、余裕がなさそうに表情を歪めている柊一さんと目が合う。
「我慢してんだよ、俺だって。この四年間ずっと忘れられなかったお前にようやく会えたんだ。本当ならキス以上のことしたいところをグッと耐えて紳士のまま帰ろうとしてんの。それなのに引き止めるようなこと言うなよ理性ぶっ飛ぶだろ」
つかんでいた私の腕を離すと、柊一さんが素早く私に背を向ける。それからふっと息を吐くと、「すまん」と小さな声で謝った。
「また連絡する」
そう告げて、柊一さんは足早にアパートを出て行った。