身を引くはずが、一途な御曹司はママと息子を溺愛して離さない
しんと静まるリビングで洗濯物を畳んでいると、ローテブルの上に置いていたスマートフォンが鳴り出した。
座ったまま手を伸ばして確認すると、それは柊一さんからの電話だった。
今まさに彼のことを思い浮かべていたところに掛かってきた着信に少し驚いてしまう。けれど、最近では夜になるとこうして連絡がくるのでなにも不思議なことではない。
いつもなら迷わず出るのに、なんだか今日は気分が乗らない。
けれど、コール音がしばらく鳴り続け、仕方なく私はスマートフォンを耳に当てた。
『もしもし、美桜?』
「はい」
自分の声が普段よりも少しだけ低い。たぶん今のどんよりとした気分のせいだろう。けれど、柊一さんは気にする様子もなく言葉を続ける。
『冬真はもう寝た?』
「少し前に」
『美桜は何をしていたんだ?』
「洗濯物を畳んでいました」
『そうか。お疲れ様。俺も仕事が終わったところ。今は圭太が運転する車で帰宅中だ』
「そうですか」
柊一さんとのやり取りも自然と素っ気なくなってしまう。でも、彼の声を聞いていると不思議と気持ちが落ち着いてきて、今度はなんだか泣きたい気分になってきた。