身を引くはずが、一途な御曹司はママと息子を溺愛して離さない
回し終えた洗濯機から洗濯物を取り出して部屋に干していると、玄関のチャイムが鳴って、思わずビクッと体が跳ねてしまう。
誰だろう……。普段ならこんな夜にチャイム音は鳴らないのに。
恐る恐る玄関へと近づき、ドアスコープをそっと覗き込む。安いアパートなのでインターホンという機能は備わっていないのだ。
不審者だったらどうしよう。びくびくしながらドアスコープを覗き込み、玄関前に立っている人物を確認する。すると、そこにいたのはスーツ姿の柊一さんで、私は慌てて玄関の扉を開けた。
「どうしたんですか⁉」
「それはこっちのせりふだ」
柊一さんは扉に手を触れるとそのまま大きく開き、一歩私へと近づき距離を詰める。
「なんだよ話がしたい気分じゃないって。電話に出たときから違和感あったけど、何かあったのかと思って心配しただろ」
「それだけのためにわざわざ来たんですか?」
「それだけって……。俺からしたら十分過ぎる理由だ」
柊一さんは軽く息を吐くと、片手で前髪をさっとかきあげる。
「とりあえず入っていい?」
「どうぞ……」
私は、柊一さんを家に招き入れた。