身を引くはずが、一途な御曹司はママと息子を溺愛して離さない

「私、頑張ってるのに。冬真が寂しくないようにたっぷりと愛情だって注いでいる。それなのにそんなことを言われてしまったのが悲しくて」
「美桜」
「でも、もっと悲しかったのは、お絵描きの時間に冬真だけがパパの絵を描けなかったことです。みんなはパパがいるのに冬真だけいないのは変だってお友達に言われたみたいで、そのことを冬真が泣きながら私に伝えてきて……」

　そこまで話したとき、私の頭を撫でていた柊一さんの手の動きがぴたりと止まった。

「もしかして、それで冬真はお友達の絵をクレヨンで汚してしまったのか？」

　柊一さんに問われて、私は静かに頷いた。

「そうか。冬真がそんなことを……」

　彼の呟きが頭上から聞こえた。

「それは、俺も責任感じるな」

　きっと柊一さんなりにいろいろと思うところがあったのだろう。でも、彼に内緒で冬真を産んで育てると決めたのは私だから柊一さんが責任を感じることはない。

　そう伝えたかったけれど、涙が溢れてこれ以上は自分の気持ちをうまく言葉にできなかった。