身を引くはずが、一途な御曹司はママと息子を溺愛して離さない
家族になりたい




 *

 動物園に行きたいと言ったのは冬真だった。
 
 柊一さんの提案で、電車に乗って少し遠くの大きな動物園に行くことに決まると、当日の朝、彼が私たちのアパートまで迎えに来てくれた。

 そこから最寄駅へと移動すると、電車を乗り継いで一時間ほどで動物園に到着する。

 冬真は初めて来る大きな動物園に興奮しているようで、入口のゲートをくぐった途端ものすごい勢いで走りだしてしまった。

「冬真。危ないから走らないで」

 ぱたぱたと走っていく小さな背中を慌てて追いかけてつかまえる。そのあとを柊一さんも追いかけてきた。

「楽しそうだな、冬真」
「動物が大好きなので」

 動物のいるゾーンへは入口から少し歩くようだ。私は冬真と手を繋ぎながら、隣に並ぶ柊一さんと会話を続ける。

「いつもは近所にある小さな動物園に行くことが多いので、今日は大きな動物園に行けるって、冬真すごく楽しみにしていました」
「そうか。誘ってよかった」
「私ひとりだとどうしてもあまり遠出できないから。今日はありがとうございます」
「どういたしまして。俺の方こそ一緒に出掛けられてうれしいよ」

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