身を引くはずが、一途な御曹司はママと息子を溺愛して離さない
「三人で一緒に撮りましょう」
すると、柊一さんがホッとしたような笑みを浮かべた。私たちのほうへ歩いてくる彼に、カメラを構えたスタッフも声を掛ける。
「それでは息子さんを真ん中にして撮りましょうか。お父さんはそちらにどうぞ」
冬真の左側を手で示したスタッフの声に、冬真がこてんと首をかしげて私を見つめる。
「お父さん?」
たぶん柊一さんのことをそう呼んだスタッフの言葉を不思議に思ったのだろう。
スタッフだけじゃなくて、おそらくここにいる人たちから見た私たちは〝家族〟に見えるのかもしれない。けれど、実際はそうじゃないから、冬真は不思議だったようだ。
じっと私を見つめる瞳にどう言葉を返していいのか迷っていると、スタッフの明るい声が響く。
「それでは撮りますね」
いつの間にか柊一さんも冬真の隣に並んでいて、ゾウのオブジェの前に三人が並んだ。それを確認すると、スタッフの掛け声が響き、続いてシャッターがぱしゃりと切られる。