身を引くはずが、一途な御曹司はママと息子を溺愛して離さない

 たっぷりと楽しんだせいかいつの間にかお昼の時間を過ぎていて、私たちは遅めの昼食を取ることにした。

 動物園には売店やレストランもあるけれど、せっかくなのでお弁当を作ってきた。

 それを食べるのにちょうどいい広場があったので、ピクニックシートを広げて三人で座る。

 最近は雨降りが続いていたけれど、今日は珍しく晴天。ぽかぽかと気持ちがいいせいか、近くには私たちと同じようにピクニックシートを広げている家族連れの姿が多い。

「わぁ! ハンバーグ! それから、ウインナーと卵焼き」

 蓋を開けた瞬間、冬真が弾けるような笑顔を見せる。他にも、ミニトマト、きゅうりのハム巻き、それにおにぎりも握ってきた。

 三人でいただきますをしてからさっそく食べ始める。

 冬真はフォークでハンバーグをさすと、大きな口を開けてぱくりと頬張った。お弁当用に小さく作ったハンバーグなので、ひと口でも簡単に食べられるようになっている。

「おいしい! おじちゃんもどうぞ」

 冬真に促されて柊一さんもハンバーグを口に入れた。

「うん。おいしい」

 そう答えた柊一さんに、冬真が満足そうに微笑む。

 園内をたくさん歩いてお腹が空いたのか、たくさん作ってきたはずのおにぎりもおかずもあっという間になくなってしまった。

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