身を引くはずが、一途な御曹司はママと息子を溺愛して離さない
柊一さんの顔がゆっくりと私に近付いてくると、ふわっと唇が触れ合った。
すぐに離れてもう一度、唇が重なる。そのまま角度を変えて繰り返されるキスに、最初は強張っていた私の体から力がすっと抜けていくのがわかった。
柊一さんはそんな私の唇を優しくこじ開けると舌をねじ込み、私の舌と絡ませて一気にキスを深くする。
「……ん」
思わず声が漏れてしまうものの、柊一さんのキスは止まらない。
蕩けるような甘い口づけに、ふと彼と付き合っていた頃を思い出した私の胸がきゅっと切なくなる。
私だって柊一さんを忘れたことはなかった。
忘れようとしてもできなくて、どうしても思い出してしまって苦しくなって。
だから、必死に忘れようとしていたのに、結局忘れることができなかった私は、今でも柊一さんのことが好きなんだ。
私の心は四年前からずっと柊一さんから離れたりなんかしていない。
さっきは冬真のために結婚を前向きに考えると言った。でも、本当は私が彼のそばにいたいのかもしれない……。
「――愛してる、美桜」
キスの合間に囁かれる柊一さんの言葉に応えるように、私はそっと彼の背中に自分の腕を回した。