身を引くはずが、一途な御曹司はママと息子を溺愛して離さない
「そういうわけだから、美桜はなんの心配もせずに思う存分ドレスショーを見ておいで」
「はい」
「ママ、バイバイ」
柊一さんに抱っこされている冬真が私に向かって手を振る。人見知りで私にいつもべったりなのに、もうすっかり柊一さんに懐いたようだ。
「それじゃあ、冬真をよろしくお願いします。リュックの中に冬真の大好きな動物のフィギュアのおもちゃと、お菓子と飲み物が入っているので」
「了解」
ふたりのもとを離れる前に、私はもう一度、冬真に向かって声を掛けた。
「冬真。パパの言うことをちゃんと聞くんだよ」
「うん」
冬真が大きくうなずく。
「僕、大丈夫だよ。バイバイ」
ぶんぶんと手を振られてしまい、思わず苦笑が漏れる。もう少し私と離れるのを渋ると思っていたのに、冬真は随分とあっさりしているようだ。
柊一さんと冬真に見送られながら、私はひとりで教会へと向かった。
周りには、これから私と同じようにドレスショーを見に行く女性たちの姿があり、その表情はみな一様に明るく弾んでいる。