身を引くはずが、一途な御曹司はママと息子を溺愛して離さない
今でも愛してる
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アマドゥールに到着すると、治さんと牧子さんに事情を説明して早退させてもらえることになった。
ふたりは嫌な顔ひとつせずに『早く冬真君のお迎えに行ってあげなさい』と、優しく私を送り出してくれた。
自転車の荷台部分にチャイルドシートを取り付けた子供乗せ自転車をこいで保育園へと急ぐ。
到着すると、冬真は担任の先生に抱っこされていた。ずっと泣いていたのだろうか。目にたっぷりと涙をためて、鼻をぐじゅぐじゅとさせている。
着ている服が朝と変わっているのは、きっと吐いたときに汚れてしまったからかもしれない。
「ママー」
私の顔を見た冬真が大きな声で泣き出してしまった。手を伸ばして私に抱っこを求めてくるので、先生から冬真を受け取ると、両手でぎゅっと抱き締めるように抱っこする。
ぐずぐずと泣きながら私の首にしがみつく冬真の背中を先生がそっとなでてくれた。
「冬真君、今さっきお昼寝から起きたばかりだからご機嫌があまりよくないのもあるし、お熱もあるからしんどいのかな」
たしかにいつもよりもだいぶ元気がないし、甘えん坊になっている。先生の言う通り、寝起きと熱のせいで本調子ではないのだろう。