身を引くはずが、一途な御曹司はママと息子を溺愛して離さない
「冬真、おうちに帰ろうか」
話し掛けても相変わらず泣いている冬真の髪をそっと優しくなでる。
「先生、ありがとうございました」
「いえいえ、お大事にね」
冬真の荷物を受け取ってから、駐輪場へと向かった。
チャイルドシートに冬真を乗せて、子供用のヘルメットを被せてあげる。それから私も自転車にまたがった。
保育園を後にして、アパートへと向かう。本当は買い物に寄りたいところだけど、熱のある冬真を連れていくわけにはいかない。夕食は冷蔵庫に残っているもので何か作ろう。
保育園から自転車を漕ぐこと十分。私と冬真が暮らすアパートに到着した。
二階まで冬真を抱っこしながら階段を上る。いつもはしっかりと自分で歩いていくものの、今日は熱があるので特別に抱っこだ。
「おうち着いたよ、冬真」
玄関に冬真を下ろすと、冬真はしっかりと自分で靴を脱ぐ。それからすたすたとリビングへと歩いていき、ソファの上に置いてあるうさぎのぬいぐるみをぎゅっと抱き締めた。
「ただいま〝ぴょんぴょん〟。いい子にしてた?」
小さな手でうさぎの頭を優しくなでている姿に、思わずふっと笑みがこぼれてしまう。