身を引くはずが、一途な御曹司はママと息子を溺愛して離さない
時計で時刻を確認すると、午後四時。
「冬真。ママこれからご飯の準備するんだけど、うどんでいいかな」
「うん、いいよ。保育園でね、お豆がいっぱい入ってるカレー食べたよ。全部食べた」
「そっか。お昼ご飯はカレーだったんだね」
「うん。でも、ゲーってなった」
そういえば、吐いちゃったんだよね。
「苦しくなかった?」
「ちょっと泣いちゃったけど、すぐ大丈夫になった」
「そっか」
なんだか突然、冬真を抱き締めたくなって、小さな体にそっと腕を回した。そのままぎゅっと抱き締める。
「明日はお休みしようね。元気いっぱいになったらまた保育園に行こう」
熱もまだあるし、吐いたのも心配だし、明日は念のため小児科に行ってみよう。そうなるとまた仕事を休まないといけないのが心苦しいけれど。
きっと木崎さんご夫婦は『気にしないで』と言ってくれるはずだ。でも、こうも毎回休みばかりもらってしまうのはさすがに気が引ける。
わりと近くに両親も住んでいるし、大変なときはいつでも呼んでほしいと言われてはいるけれど、できることならあまり頼りたくはない。
冬真がお腹の中にいるとわかったとき、ひとりで産んで育てると決めたのは私だ。だから、なるべく誰の手も借りずに自分だけでなんとかしたい。たぶん、これは私のくだらない意地だ。