身を引くはずが、一途な御曹司はママと息子を溺愛して離さない
それから一週間が過ぎたけれど、柊一さんから貰った名刺の裏に書かれた連絡先には連絡をしなかった。
私は彼と別れたときに自分の連絡先を変えているので、柊一さんからは私に連絡ができない。だから彼は私からの連絡を待ち続けているのだろう。
けれど、さらに二日が経った日の夕方。仕事を終えてお店を出ると、少し離れた場所に柊一さんの姿を見つけた。
一向に連絡をしない私にとうとうしびれを切らし、自分から会いに来たのかもしれない。柊一さんは視線に私を捉えると、こちらに向かって駆け寄ってくる。
「美桜」
とっさに逃げようとしたものの、腕をつかまれて引き戻されてしまった。
「どうして連絡をくれないんだ」
「ごめんなさい。急いでるので」
今すぐにこの手を離してほしい。私は、あなたと話すことなんて何もないから。
「これから子供を迎えに行くのか?」
尋ねられたので、私はうつむいたまま小さくうなずく。
「たしか〝とうま〟と呼んでいたな。この前の電話で」
柊一さんの口から冬真の名前が出た瞬間、ドクンと心臓が跳ねた。