身を引くはずが、一途な御曹司はママと息子を溺愛して離さない
「本当は今年で四歳になるらしいな。美桜の職場の女性が、親切に俺の間違いを正してくれた」
おそらく牧子さんのことを言っているのだろう。その話なら彼女から聞いている。
「どうして俺に嘘をついた? 俺に知られたくなかったからか」
「それは……」
思わず顔を上げてしまうと、柊一さんが射るような視線で私を見つめていた。
「俺たちが別れたのも四年前だったよな」
「何を、言いたいんですか」
「わからないのか?」
震える声で聞き返せば、すぐに強い口調で返されてしまう。
……本当は、わかっている。柊一さんが何を言いたいのかなんて。
「子供は、俺との子だろ」
「違う」
思わず大きな声で叫んでしまった。
「違います。あなたの子じゃない」
「でもそれだと」
「違うの。本当に、違うから」
「美桜……」
何度も違うと叫ぶ私に、柊一さんは口を閉じてしまった。けれど、しばらくして小さく息を吐く。
「もう俺に隠さなくていいから」
「私はなにも隠してなんか――」
「お前、結婚もしていないだろ」
私の言葉を遮って柊一さんがきっぱりと告げる。