身を引くはずが、一途な御曹司はママと息子を溺愛して離さない

「本当は今年で四歳になるらしいな。美桜の職場の女性が、親切に俺の間違いを正してくれた」

 おそらく牧子さんのことを言っているのだろう。その話なら彼女から聞いている。

「どうして俺に嘘をついた? 俺に知られたくなかったからか」
「それは……」

 思わず顔を上げてしまうと、柊一さんが射るような視線で私を見つめていた。

「俺たちが別れたのも四年前だったよな」
「何を、言いたいんですか」
「わからないのか?」

 震える声で聞き返せば、すぐに強い口調で返されてしまう。

 ……本当は、わかっている。柊一さんが何を言いたいのかなんて。

「子供は、俺との子だろ」
「違う」

 思わず大きな声で叫んでしまった。

「違います。あなたの子じゃない」
「でもそれだと」
「違うの。本当に、違うから」
「美桜……」

 何度も違うと叫ぶ私に、柊一さんは口を閉じてしまった。けれど、しばらくして小さく息を吐く。

「もう俺に隠さなくていいから」
「私はなにも隠してなんか――」
「お前、結婚もしていないだろ」

 私の言葉を遮って柊一さんがきっぱりと告げる。

< 35 / 180 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop