身を引くはずが、一途な御曹司はママと息子を溺愛して離さない

「一度にいろいろと言い過ぎてしまったが、追い詰めたかったわけじゃないんだ。ただ、俺は美桜の口から真実を聞きたかった」

 柊一さんが私の腕をゆっくりと離した。

「今日のところは帰るが、もしも俺と話をする気になってくれたら連絡してほしい」

 そう告げて私に背を向けた柊一さんがゆっくりと歩き出す。

 そこでようやく顔を上げた私は、去って行く彼の背中に向かって「待ってください」と声を掛けた。振り返った柊一さんに静かに問い掛ける。

「もしも、あなたの子供だと言ったらどうしますか」

 その瞬間、柊一さんの目が見開かれた。

 柊一さんとの別れを選んだ四年前、彼には絶対に断ってはいけない縁談があった。

 今日も彼の左手の薬指に指輪はないけれど、たぶんそのときの女性と結婚をしたのだろう。彼が今、セリザワブダイダルの社長をしているのが何よりの証拠だ。

 そうだとしたら、私となんてもう関わらない方がいいはずなのに。私のことを調べて、冬真を自分の子供だと確かめてどうするつもりなのだろう。

 もしかして、隠し子の存在を知られないよう口封じをするつもりだろうか。

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