身を引くはずが、一途な御曹司はママと息子を溺愛して離さない

「私、冬真があなたとの子供だってことを誰にも話したりしません。あなたの今の生活をじゃましたりしないので安心してください。今回は偶然会ってしまったけど、もう二度とあなたの前には現れないので……」

 だからもう柊一さんも私たち親子には関わらないでほしい。

 私の言葉を黙って聞いていた柊一さんだったけれど、しばらくして深いため息を落とした。

「美桜。お前、勘違いしてる。俺はそういうつもりでお前たちのことを調べたわけじゃない」
「じゃあどうして今さら――」
「美桜とやり直したいからに決まっているだろ」
「えっ……」

 瞬間、強張っていた体の力がすとんと抜けた。

 やり直したいってどういうこと? 

「でも、結婚したんじゃ……」
「してない」

 柊一さんはきっぱりとそう言った。そして、じっと私を見据えて静かに告げる。


「俺は、今も美桜だけを愛している」


 じっと私を見つめながら静かに告げた彼の言葉に、ふと四年前のことを思い出す。



『俺はこれから先もずっと美桜と一緒にいたい。愛してる、美桜。俺と結婚しよう』



 その瞬間、思わず涙が込み上げてしまい、それを隠すように私はそっとうつむいた。

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