身を引くはずが、一途な御曹司はママと息子を溺愛して離さない

『それなら、俺の今回の出張の同行者としては合格だ。実は、北海道にうちのドレスショップの新店舗を出す計画があるんだけど、今回の出張はそのためのリサーチなんだ。お前も元ドレスコーディネーターや衣装事業部にいた頃の経験から、何か意見があれば遠慮なく俺に言ってくれて構わない』
『はい』
『当日のことはまた詳しくわかり次第、伝えるから』
『了解です』

 どうやら私が芹沢課長の出張に同行するのは、ただ手が空いていたからという理由だけではないらしい。

 ドレス関連の知識がしっかりとある。そのことも含めて、同行者に選ばれたのかもしれない。

 そうだとしたらしっかりと芹沢課長のお役に立てるように頑張らないと。

 でも、この人とふたりきりで一泊二日なんて耐えられるだろうか。

 怒られないように普段以上に言動には気を付けないといけないな。と、不安に思いつつ気合いを入れていると、なぜか芹沢課長がイスごと私の方へぐんと近づいてきた。私との距離、おそらくわずか十五センチほど。

 ち、近い。どうしたの?

『お前さ、この資料の打ち込み昨日からしてるよな』

 芹沢課長の視線は私のデスク上のパソコン画面へと向けられている。

 その指摘に思わずギクリと体が跳ねた。やばい、バレた。

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