身を引くはずが、一途な御曹司はママと息子を溺愛して離さない
しばらくすると食事が運ばれてきたので、私はさっそく箸をつける。
『おいしい!』
お昼休憩を取ってから休憩を取らずに残業までこなしていた私のお腹は空腹だ。もりもり食べながら、二杯目のビールも追加で頼んだ。
『そんなに腹が減っていたのか』
『当たり前じゃないですか。残業してきたんですよ、私』
ビールが届いたのでそれを飲みつつ、食事にも手を付ける。空腹のお腹を満たすようにぱくぱくと食べ続けていると、ふと気が付いた。
残業で仕方がなかったとはいえ待ち合わせの時間に遅れて来て、会話もそこそこにお酒をがぶがぶと飲み、ぱくぱくと料理を食べ続ける彼女ってどうなのだろう……。
きっと柊一さんは呆れているに違いない。
ふと食べる手を止めた私は、恐る恐る柊一さんに視線を向ける。
『ん? どうした』
私を見つめ返す彼の眼差しは、予想外にとても柔らかかった。
どうやら柊一さんは食事にあまり手を付けず、目の前の私を眺めていたらしい。微笑まれるように見つめられて、恥ずかしくなってしまった私は思わず視線をそらしてしまう。
それから再び食べ物を口に運び始めた。