身を引くはずが、一途な御曹司はママと息子を溺愛して離さない
セリザワブライダルを退社した私は、柊一さんとの関わりを一切断つために連絡先を変えて、アパートを引き払うと都内にある実家に戻った。
恋は手放してしまったけれど、夢だけは諦めずにいよう。そう思いながら再就職に向けて動き出そうとした矢先にお腹に赤ちゃんがいることがわかった。もちろん柊一さんとの間にできた子だ。
すぐにつわりがひどくなり再就職どころではなくなってしまった。
それからは両親の助けをかりながら妊婦生活を送り、出産、そして育児に奔走する日々が始まった。
そして、息子の冬真が八か月を迎えたおととしの春。
私は、求人募集で見つけた木崎さんご夫婦の洋菓子店で働くことになった。それをきっかけに実家を出て、小さなアパートを借りると冬真とふたりだけの生活を始めた。
つつましい暮らしながらも穏やかで幸せな毎日を過ごしていたある日。私は、柊一さんと四年振りに再会してしまったのだ――。