身を引くはずが、一途な御曹司はママと息子を溺愛して離さない
今度は離さない
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――セリザワブライダル本社ビル。
最上階にある社長室のデスクに頬杖をつきながら、俺はスマートフォンの画面をぼんやりと見つめていた。
四年振りに再会した美桜に俺の連絡先を渡してから、今日で一か月が経とうとしている。けれど、いまだに彼女からの連絡はない。
美桜はもう俺に会いたくないのだろうか。俺を受け入れてはくれないのだろうか。
俺と再会したときの美桜はどう見ても戸惑っているようだったし、あからさまに俺を避けようとしていた。
もう二度と会いたくなかった……と、言葉に出して言われたわけではないが、美桜の表情や仕草からそんな気持ちがひしひしと伝わってきて、それが余計につらかった。
この四年間、俺は美桜を忘れたことなんてなかったし、会いたくてたまらなかった。でも、美桜にとって俺はもうすっかり過去の人になっていたようだ。
俺のせいで美桜の人生をめちゃくちゃにしてしまったんだ。たぶん俺はもう美桜に嫌われているはずだ。
そう思ったら、自然と深いため息がこぼれてしまう。
「――社長。仕事中です」
掛けられた声に視線だけを動かすと、少し離れた場所にあるデスクで圭太が睨むような鋭い眼差しを俺に向けていた。