身を引くはずが、一途な御曹司はママと息子を溺愛して離さない
「――圭太。お前、美桜の子供の顔見たんだよな」
資料に目を向けつつ声を掛けると、軽快にキーボードを打つ圭太が「ええ」とうなずいた。
美桜との再会後、俺は圭太の知り合いがいる調査会社に依頼して彼女のことを調べてもらうことにした。そこから得た情報の確認をさらに圭太に頼んでいたので、そのときに美桜の子供の顔を見たはずだ。
「あなたの子供の頃に瓜二つでしたよ。DNA鑑定をする必要がないくらい、あの子は間違いなくあなたのお子さんです」
「ということは、イケメンってことか」
冗談混じりにそう答えたら、圭太に無視された。カタカタと圭太がキーボードを打つ音だけが社長室に響く。
「あなただって早くご自分の息子の顔を見たいでしょう」
「そうだな。でも、美桜の許しをもらわないと」
会いたい気持ちは募るばかりだが、勝手に会うのは違う気がする。その前に、美桜に今の俺を受け入れてもらうのが先だ。