身を引くはずが、一途な御曹司はママと息子を溺愛して離さない
『セリザワブライダルを辞めたすぐあとに妊娠していることがわかったんです。どうしても産みたくて、柊一さんには内緒で冬真を産んで育てていました。ごめんなさい』
「どうして謝るんだ?」
真実を教えてくれた美桜が最後に謝罪の言葉を口にしたので、その理由を尋ねる。彼女は震える声で言葉を続けた。
『勝手にあなたの子供を産んでしまったので、迷惑ではなかったかな、と……』
「そんなこと思うわけがないだろ。俺と美桜の間に子供がいたなんて嬉しいに決まってる」
けれど、同時に申し訳ない気持ちにもおそわれる。美桜と連絡が取れなかったとはいえ、最近まで息子の存在を知らなかったことが情けなくてたまらない。
すると、電話の向こうで美桜が安心したようにホッと息を吐くのがわかった。
『嬉しいと言ってもらえてよかった。ずっと隠していてごめんなさい。柊一さんに冬真と会ってもらいたいです』
「ああ。俺も会いたい」
『でも、ひとつだけお願いがあります。冬真にはまだ柊一さんが父親だってことは内緒にしてください。たぶんびっくりしちゃうと思うから』
「そうだな。今は会えるだけで十分だ」