身を引くはずが、一途な御曹司はママと息子を溺愛して離さない
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「ママー。これからじいじとばあば来るの?」
キッチンで料理をしていると、リビングで遊んでいたはずの冬真がいつの間にか私の後ろにいて、エプロンの裾をつんつんと引っ張ってきた。
振り向いた私は冬真の目線に合わせるためにしゃがむと、小さな手を握りながら答える。
「じいじとばあばじゃないよ。今日はママのお友達が来てくれるから、一緒にご飯食べるんだよ」
「お友達?」
こてんと冬真が不思議そうに首をかしげる。
今日はこれから柊一さんが我が家を訪れる予定になっている。約束の時間は十八時で、一緒に夕食を食べるのだ。
冬真には柊一さんのことをどう伝えていいのか迷い〝お客さんがくるよ 〟と伝えていたのだけれど、どうやら私の両親が遊びに来ると思っていたらしい。
でも『今日はあなたのお父さんが来るんだよ』とはさすがに言えない。考えた末、冬真でもわかるように伝えるには〝お友達〟という表現がベストな気がした。
「これからママの大切なお友達がくるの。そうだなぁ、冬真のお友達でいうと愛菜ちゃんみたいなお友達かな」
「愛菜ちゃんくるの?」
「うーん、愛菜ちゃんが来るんじゃなくて……」
どう説明すればいいのだろうかと考え込んでしまう。