身を引くはずが、一途な御曹司はママと息子を溺愛して離さない

 ***

「ママー。これからじいじとばあば来るの?」

 キッチンで料理をしていると、リビングで遊んでいたはずの冬真がいつの間にか私の後ろにいて、エプロンの裾をつんつんと引っ張ってきた。

 振り向いた私は冬真の目線に合わせるためにしゃがむと、小さな手を握りながら答える。

「じいじとばあばじゃないよ。今日はママのお友達が来てくれるから、一緒にご飯食べるんだよ」
「お友達?」

 こてんと冬真が不思議そうに首をかしげる。

 今日はこれから柊一さんが我が家を訪れる予定になっている。約束の時間は十八時で、一緒に夕食を食べるのだ。

 冬真には柊一さんのことをどう伝えていいのか迷い〝お客さんがくるよ 〟と伝えていたのだけれど、どうやら私の両親が遊びに来ると思っていたらしい。

 でも『今日はあなたのお父さんが来るんだよ』とはさすがに言えない。考えた末、冬真でもわかるように伝えるには〝お友達〟という表現がベストな気がした。

「これからママの大切なお友達がくるの。そうだなぁ、冬真のお友達でいうと愛菜(あいな)ちゃんみたいなお友達かな」
「愛菜ちゃんくるの?」
「うーん、愛菜ちゃんが来るんじゃなくて……」

 どう説明すればいいのだろうかと考え込んでしまう。

< 98 / 180 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop