身を引くはずが、一途な御曹司はママと息子を溺愛して離さない
冬真を産むまで小さな子供との接点がほとんどなかった私にとって、このくらいの年齢の子とのお喋りには頭を悩ませてしまうことがたびたびある。
「これから来るママのお友達は、冬真にとっての愛菜ちゃんみたいに大切なお友達なの。冬真、愛菜ちゃんのこと大好きでしょ?」
「うん、大好き。愛菜ちゃんかわいいし、優しいし、いつも保育園で遊んでる。えっとね、今日はお砂場で一緒にバケツで遊んだ」
「バケツ? お山作ったのかな」
「ううん、ケーキ作った。いちごとろうそくも乗せたよ」
「そっか。美味しそうなケーキできたね」
たぶん、小石をいちごに、木の棒をろうそくにしたのかな。公園のお砂場で遊ぶときも冬真はよくそうしているから。
今日は土曜日だけど私は仕事があったので冬真を保育園に預けていた。同じクラスの愛菜ちゃんもどうやら土曜保育に来ていたようで、お砂場で一緒に遊んだらしい。
愛菜ちゃんは、人見知りで内気な冬真が保育園で最初に仲良くなったお友達で、活発で明るい女の子だ。冬真は愛菜ちゃんのことが大好きだし、愛菜ちゃんも冬真のことが大好きなようで、ふたりでよく『ケッコンしようね』と言っている。
おそらく冬真は〝ケッコン〟の意味をよくわかっていないと思うけれど。