愛することを忘れた彼の不器用な愛し方
日下さんが香苗さんのことで悩むように、私だっていろいろと思うところはある。
考えて考えて、納得して、それでも現実を突きつけられるとめげそうになることもある。

でもそれは、人間なんだから仕方ないでしょう?
私だって完璧な人間じゃない。

それでも私は日下さんが好きなんだから、もうこれはどうしようもない。乗り越えていくしかないんだから。

私は改めて姿勢を正す。
そして小さく深呼吸をしてから、震えそうになる声で囁いた。

「暁さん、大好きです」

勇気を出して名前を読んでみたら、日下さんは持っていたグラスを落としそうになった。そしてそれを静かにテーブルへ置く。

流し目でこちらを見たかと思うと、ふいにグッと引き寄せられて軽く唇を奪われた。

「芽生、好きだよ」

唇が離れる瞬間、囁く声は私だけに聞こえるくらいの大きさで。

初めて“好き”と言われた喜びは涙となってこぼれ落ち、一瞬にして幸せな気持ちで満たされた。

私たちはここから始まるんだ。

そんな風に思わせてくれる甘く優しいキスだった。



【END】
< 104 / 104 >

ひとこと感想を投票しよう!

あなたはこの作品を・・・

と評価しました。
すべての感想数:121

この作品の感想を3つまで選択できます。

この作家の他の作品

表紙を見る
泡沫の恋は儚く揺れる~愛した君がすべてだから~

総文字数/96,026

恋愛(その他)145ページ

表紙を見る
俺様御曹司は無垢な彼女を愛し尽くしたい

総文字数/77,528

恋愛(オフィスラブ)111ページ

表紙を見る

この作品を見ている人にオススメ

読み込み中…

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop