愛することを忘れた彼の不器用な愛し方
「二人は気が合うんだね。面白っ。はははっ」

よほど面白かったのか、ツボに入っただけなのか、日下さんは控えめながらもクスクスと笑い続けた。

そんな日下さんを見るのが新鮮で、私はポカンとしてしまう。ママはふっとため息をつきながら、私に言った。

「芽生ちゃん、暁ちゃんのことよろしく頼んだわよ」

「へ?」

意味がわからなくてすっとんきょうな返事をすると、ママにバシンと肩を叩かれた。

「よろしくやれって意味よ!」

「ママ、日下さん狙いなんじゃないの?」

「あーホントにこの子はっ!譲ってやるって言ってんのよ!」

呆れ返るママと未だに笑っている日下さん。
それを見て首を傾げる私。
ふいに日下さんと目が合った。

「よくわかんないけど、よかったです。日下さんが笑ってくれて。いつもそうやって楽しそうに笑ってください」

「不思議だね、芽生は。俺のことどんな目で見てるの?」

「どんなって……」

「俺のこと何も知らないくせに」

「えっ。そ、それはそうですけど。……そうですよね、ごめんなさい」

そうだ、ただ私の感覚だけで日下さんのことを見て話している。会社で笑う日下さんはいつも寂しそうに笑う。本人は一言もそんな事を言っていないのに、勝手に寂しそうな笑顔だなんて思うのは失礼なことだ。

私が日下さんを好きだから。だからきっと余計に気にしてしまうだけなんだろう。

こんなことを言われて、日下さんも気分悪いよね。
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